写真集 「ブエノスアイレス 千の断片」 ■■■
(English Version)
 上のタイトルをクリックして表示されるページの「開始」ボタンを押すと「ブエノスアイレス 千の断片」が開始する。この写真集は静止画像を短時間で切り替えることで、映画のフラッシュ技法的な効果を狙っている。写真は全部で2000枚以上ある。1枚あたり1秒から1.5秒の切り替え時間で見たときに最大の効果を発揮する。しかし、通信環境によってはむずかしいかもしれない。その場合、切り替え時間を長くするしかないが、2秒以上になると動画的な効果は著しく損なわれる。ただし、一度、ゆっくりと表示すれば、2度目は高速で表示できるはずである。鑑賞するときは、モニターの輝度を明るく設定することを推奨する。

「千の断片」とブエノスアイレス
 これらの写真は歩く速度で撮ることをコンセプトとして撮影された。通常の写真のように立ち止まって撮影するのではなく、歩きながら立ち止まらずに撮る。この点でも動画的である。写真の順列は時系列順に並べられているので、見る者は撮影者の軌跡と視線の移動をなぞることになる。ブエノスアイレスに詳しい方ならば、撮影者がどのように移動したのを推測することができるだろう。
 撮影のためにどこかを訪れるということはしていないので、撮影場所はどうしても私の行動範囲に限定されている。私が居住している地域から中心街に出るためには、電車、あるいは地下鉄かバスを利用する。撮影場所にこれらの公共の交通機関が多いのはそのためである。
 この写真集は、ブエノスアイレスを紹介するために撮られたものではない。ほとんどすべての写真はコントラストを強調することで、ディテールを失っている。つまり、写真によって伝えることの可能な情報の多くを損失している。その結果として得られるのは強調された輪郭線と色彩、そして質感による造形である。つまり、この写真集はブエノスアイレスで見つけ出された形を集積したものである。造形は人工物によって構成される場合もあるし、人の肉体といった自然物によって形作られることもある。この写真集を見る人が社会的背景といったものにとらわれず、これらの形から直接何かを感じ取ることを私は期待している。形から直接感じ取るとは、孔雀の羽や虹といった色彩の配置が、詩的な文脈を失ったとしても、その配列ゆえに意味があるということである。撮影対象は特にブエノスアイレス固有のものを狙ったわけではない。ショーウインドウに並べられた輸入品や多国籍企業が作る自動車には、何もローカル固有の性質はない。
 とはいえ、撮影者の思惑に反し、写されたものはブエノスアイレスの街頭にあるという理由でブエノスアイレス的である。結果として、この写真集はブエノスアイレスでしか撮りえないものになっている。だから、この写真集からブエノスアイレスに関する情報を引き出すことも可能である。例えば、アルゼンチンのような移民国の場合、どのような人種構成なのかを知ることは活字情報からでは難しいが、そのような情報を欲している人に、この写真集はイメージを提供できるかもしれない。しかし、移民のいる多くの国がそうであるようにアルゼンチンも人種構成は地域によって大きく異なる。ここに記録されているのは、あくまで、撮影者がすれ違った一部の偏った人々に過ぎない。また、造形を求めるスタンスによる撮影対象の選択も情報を歪める原因となっているし、画像修正によって人の繊細な肌の色調は大きく損なわれている。
 「千の断片」というタイトルは、撮影時に掲載写真1000枚を目標としたためにつけられた。しかし、公開を開始したときにはすでに写真は2000枚を超えていた。あくまで「たくさん」という意味だと理解してほしい。

写真集「ブエノスアイレス 千の断片」ダウンロード版(46MB)
  (ダウンロード版はオフラインで写真集を見ることができます。ダウンロードして解凍後、index.htmをWebブラウザで開いてください)
秋月イワオ
1964年 神奈川県生まれ
テクニカルライター
アルゼンチン在住
音楽公開サイト http://www.muzie.co.jp/cgi-bin/artist.cgi?id=a002231